元気になるメルマガ

  • 2015.08.10
  • 一般公開

「大東亜戦争についての思い」

# 三つの戦争

 暑い日が続きますが、皆さんお元気におすごしのことと思います。

 八月になると、どの人の胸にも広島、長崎、ふたつの都市を襲った悲
劇が映像としても、人々が背負った苛酷な運命の物語りとしても蘇って
くることでしょう。広島、長崎の前には東京、神戸をはじめ、多くの都
市が空襲を受けました。業火に焼かれた人々の無念を忘れてはならない
と、しみじみ、思います。

 戦争についてたくさんの人たちが議論をしています。安倍総理の戦後
七〇年の談話は八月十四日、閣議決定を経て発表されるそうです。その
中に「侵略」の文字をどうしても入れるべきだ、或いは入れるべきでは
ないという議論が続いています。民主主義の国ですから主張や意見が分
かれるのは当然です。そこであの大東亜戦争をどのように考えたらよい
のか、一緒に考えてみませんか。

 私は大東亜戦争についての考え方の基本を田久保忠衛氏に教わりまし
た。氏は大東亜戦争が三つの戦争から成り立っているという認識が大事
だと言います。ひとつめの戦争が日中戦争です。二つ目が日米戦争です。
三つ目が日ソの戦いです。

 それぞれみんな性格が違います。性格の全く異なる三つの戦争を「侵
略」という二文字で括ってしまうのは適切ではありません。侵略という
言葉がいかにあてはまらないかは、三番目の日ソの戦いを振りかえれば
明らかです。


# 日ソの戦いは日本の侵略か

 日ソ間には当時日ソ中立条約がありました。同条約は昭和二十一年四
月まで有効でした。ところがソビエト側はこれを一方的に破って日本に
攻撃をかけてきたのです。

 昭和二十年八月九日。すでにその三日前に広島に原爆が落とされ、長
崎に原爆が落とされるその日をめがけて、一五七万のソビエト軍が一斉
に、嵐のように南侵してきました。日本にとっては驚愕意外の何物でも
なかったソ連の裏切りでした。日本政府は中立条約の相手国であるソ連
を信じて、日本と、アメリカをはじめとする連合国側との停戦を斡旋し
てくれるように、ソ連に頼み続けていたのですから。日本国政府の意図
をソ連は十分に知りながら、仲介する振りをしながら、日本を騙し騙し
して、八月九日突然攻め込んできたわけです。


# 宣戦布告なき軍事侵攻

 この辺の事情について詳しく知りたい方は八月九日付けの「産経新聞
」一面トップの記事を読まれるとよいと思います。編集委員の岡部伸氏
が英国立公文書館の極秘文書をスクープしています。

 ソビエトの対日参戦は宣戦布告なしの参戦だったことが詳報されてい
ます。日本政府がソ連の宣戦布告を知ったのは日本時間の八月九日午前
四時、すでにソ連兵の武力侵攻開始から四時間が経っていました。日本
政府が正式な宣戦布告文を受け取ったのは八月一〇日午前十一時一五分、
ソ連侵攻開始から三五時間以上が過ぎていました。

 日本の真珠湾攻撃は宣戦布告の文書が一時間遅れたために、卑怯な攻
撃だと強く非難されてきました。ソビエトは国際条約である中立条約を
破った上に宣戦布告もなしに日本を侵攻したわけです。

 日本侵攻は六〇万人に上るシベリア抑留者の悲劇に加え、満州在住の
二一〇万の日本人、とりわけ女性と子供たちにとって地獄のような悲劇
をもたらしました。北方領土はそのときから今日まで、ソ連によって不
法に奪われたままです。

 このことも含めて大東亜戦争があるわけです。大東亜戦争を侵略の二
文字で括ることがいかにおかしいか、このことからだけでも、理解でき
るのではないでしょうか。


# マッカーサーの証言

 米国との戦争はどうでしょうか。占領軍を率いて日本を七年弱も統治
したダグラス・マッカーサーが米国に戻ってアメリカ議会で証言してい
ます。日本の対米戦争は自衛のための戦争だった、と。

 日米開戦の前の段階で、フランクリン・ルーズベルト米大統領がすで
に日本の暗号を読んでいたのは、歴史の事実として確立されています。
米国だけでなく英国も日本の暗号電報を解読していました。

 そうした中で、日本がいかに戦争を回避しようと努力したか。日本政
府の考え方を察知したグルー駐日米大使の戦争回避努力とは対照的に米
国政府は戦争を望んでいました。日本のメディアも世論を煽り、軍部も
戦争に向かって突き進むかのようでした。


# ルーズベルトの企み

 ルーズベルト大統領はヨーロッパの戦争に参戦したいと熱望、当初、
ドイツを挑発しました。ドイツに対米戦争を仕掛けさせて、米国はドイ
ツへの反撃の形でヨーロッパの戦争に参戦しようとしていたのです。

 この辺りは米国歴史学会の会長を務めたチャールズ・ビーアドの『ル
ーズベルトの責任』(藤原書店)に詳しく書かれています。

 ドイツが思うように挑発に乗らなかったとき、ルーズベルトは日本を
ターゲットにし始めました。

 米国で日本人がいかに排斥されたか。日本を孤立させるために殆ど米
国に頼っていた資源がどのように輸出禁止にされたか。米国の日本に対
する締め上げはまさに苛烈でした。

 そうした中で日本は活路を拓くためにやむなく戦争に踏み切ったので
はないでしょうか。戦争に踏み込んだ日本は愚かだったと、私も思いま
す。絶対に対米戦争はすべきではなかったと強調したいと思います。し
かし、これが侵略のための戦争だったとは、私は考えていません。マッ
カーサーが「自衛戦争だった」と議会で言ったことが真実に近いと考え
ています。


# 日中戦争を考える

 次に日中戦争です。日本軍を中国に送り込んだこと自体が侵略だとい
う人がいます。

 日中戦争は満州事変から始まったのであり、そのときから昭和二〇年
まで、日本はずっと中国を侵略し続けたという人もいます。

 日本は確かに満州事変を起こしました。この満州事変をどのように見
るべきかについて非常に勉強になる報告書があります。当時北京にいた
米公使のジョン・マクマリーの報告書です。

 マクマリーは、なぜ日本が満州を攻撃したかについて立派なレポート
を書いています。日本のひき起こした満州事変を厳しく非難しながらも、
「満州事変は、中国が自ら撒いた種を刈り取っているようなものだ」
と書いています。そのような分析の理由を理解するには約十年程前まで
遡り、ワシントン会議のことから掘り起こさなければなりません。


# 遠因としてのワシントン体制

 一九二〇年から二一年にかけて米国の首都ワシントンで海軍軍縮会議
が開かれました。結果としてワシントン体制と呼ばれる世界秩序が、一
応作られました。そのポイントは、ヨーロッパ諸国も米国も日本も、こ
れ以上中国を侵略せずに現状維持でいくということです。そのためには、
いま結ばれている条約、契約、決まり事を関係諸国がきっちりと守ると
いう合意でもあります。

 現状維持ですから中国はそれ以上の侵略を受けないという理屈ですね。
日本はこのいわゆるワシントン体制に忠実に従いました。従わなかっ
た国がひとつありました。中国です。中国はありとあらゆる形で日本を
挑発しました。抗日運動をし、日本人を殺害し、契約を破り続けました。

 このことをつぶさに見ていたのが北京にいた欧米諸国の外交官です。
その筆頭が米国公使のジョン・マクマリーでした。彼はざっと以下のよ
うに書きました。


# マクマリー報告書

 日本が満州事変を起こしたことを非難する。しかし、原因を作ったの
は中国である。他の国々と較べて、日本がワシントン体制を守ろうと最
も誠実に努力してきたことは各国の外交官全員が認めるところだ。

 一方、中国は日本を挑発し続けた。日本は耐えかねて、ワシントン体
制に合意した米欧諸国にワシントン体制の見直しを申し入れた。しかし、
米欧諸国、とりわけ米国政府は中国側に立って日本の要請を無視した。

 以上のように書いて、マクマリーは米国の判断は間違いであると断じ、
次のように結論づけました。

 米欧諸国が中国の横暴な振る舞いを黙認する中、日本は満州事変に踏
み切った。満州事変そのものは日本に責任があるが、そこに至る過程を
考えれば、事変そのものは中国が自ら撒いた種を刈り取っているような
ものだ。

 当時の米国務省の主流は親中派でしたから、米国随一の中国専門家と
言われたマクマリーのこの報告は無視され、放置されました。


# 幅広い議論を受けとめたい

 こうしたことを考えると、日中戦争の評価の難しさを痛感します。だ
からこそ、この夏の暑い日々、歴史について私たちはもう一度学んでみ
ることが大事だと感じます。

 ちなみにどんな本を読めばいいのか、推薦するとしたら、私はジョン
・マクマリーの『平和はいかに失われたか』という本と、国際連盟のリ
ットン調査団報告書を渡部昇一氏が解説した『全文リットン報告書』の
二冊をお薦めします。出版社、著者名は以下のとおりです。

『平和はいかに失われたか―大戦前の米中日関係もう一つの選択肢』(
原書房 ジョン・ヴァン・アントワープ・マクマリー、アーサー ウォ
ルドロン) 

『全文リットン報告書』(ビジネス社 渡部昇一)

 蝉しぐれです。皆様お体お大切に。暑さにまけず、おすごし下さいね。

                           櫻井よしこ


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