元気になるメルマガ

  • 2016.06.25
  • 一般公開

「初めて選挙をするあなたへ」

〈 私が18歳だったとき 〉

 みなさん、こんにちは。イギリスがEU離脱を決めました。大英帝国
に残されていた光りが弱まり、消えていく、その始まりだと感じます。
世界は本当に激変しています。そんな中で、私たちは間もなく参議院議
員選挙を迎えます。18歳から19歳の人たちも初めて参加する選挙で
す。

 私自身はどんな18歳だったか、その頃を振り返ると、世界のことも
政治のこともわかっていませんでした。けれども、若い人たちはいま、
国の在り方を決める権利と責任を与えられました。そのことに正面から
向き合ってほしい。


〈 学生たちの力 〉

 世界を見渡せば、若い世代が国の在り方を大きく変えた事例は少なく
ありません。台湾のひまわり運動や香港の雨傘革命が、すぐに脳裡に浮
かびます。18歳とは限りませんが、アメリカでもヨーロッパでも、若
い世代の考え方、主張が政治を動かしています。

 台湾のひまわり運動の学生達の原動力は、台湾人が台湾人であり続け
たいとの思いでした。馬英九前政権の政策では台湾は中国の一部にされ
てしまうと直感して立ち上がりました。

 馬前総統の政策は経済も教育もおよそすべて、台湾は中国の一部とい
うかのような前提に立っていました。日本でも報じられたように、ひま
わり運動の学生たちは2014年3月から4月にかけて実に30日も台
湾議会を占拠し、台湾の中国化に異を唱えたのでした。

 彼らの力が起爆剤になって、民進党支持が高まり、蔡英文総統が誕生
したといっても過言ではありません。若い世代の期待、台湾人の反中国
感情に支えられている蔡新総統のこれからは苦労の多いものになります
。中国が蔡総統を独立志向だと見做して、すでに強硬策を取り始めてい
るからです。外交・安全保障、そして経済政策の全てにおいて、蔡総統
は中国と闘い、張り合っていかなければなりません。同時に、中国と或
る意味、よい関係を保たなければなりません。


〈 中国の苛め 〉

 それにしても中国は台湾を苛めるツボを心得ています。経済的に追い
込むのです。まず、台湾への観光客の規制です。一党独裁体制ですから
、国民の海外旅行の規制など容易です。4月30日から5月2日までの
メーデーの連休で、台湾を訪れた中国人観光客は前年比で30%減りま
した。中国人観光客は台湾旅行業界の最重要の財源ですから、これだけ
でも十分な圧力です。

 貿易も規制し始めました。馬前政権下で2010年に結ばれたのが中
台経済協力枠組み協定、ECFA(エクファ)でした。一言でいえば台
中貿易の関税を大幅に下げると決めた協定です。たとえば、台湾の農業
産品を中国に輸出する際には、関税をゼロにするというものです。台湾
は中国領であり、台湾農業は国内産業であるから、関税など課さないと
いう考え方です。


 〈 蔡英文さんのこと 〉

 このような発想に立つ取り決めは本来、台湾側が拒否すべきですが、
中国志向の強い馬政権が喜んで受け入れました。台湾の農家は矛盾を感
じながらも関税ゼロの分、輸出がし易くなりますから、これまた受け入
れました。農業だけでなく、同じようにして台湾経済の中国依存度が高
まりました。

 それをいま、中国は逆利用し、台湾農産品の輸入を規制し始めたので
す。台湾バナナの対中輸出が滞り、台湾の果物農家が悲鳴を上げていま
す。

 このような一連の中国の圧力をかわしながら、蔡さんは、これからの
台湾を担っていかなければならないのです。百戦錬磨、手練手管に長け
た中国人を相手にするのです。

 彼女は元々は学者でした。真面目で金銭面では清潔な人です。台湾人
が台湾人として生きることの出来る国造りを、彼女は目指しています。
中国から圧力をかけられ続ける中、総統に選ばれた自分が強くなること
で、台湾人も台湾ももっと強くなれると、彼女は決意しています。彼女
の歩む道の険しさを、皆が知っています。だからこそ、台湾人として果
敢に立ち上がった彼女の背中を学生や若い世代は力強く押しているので
す。中国という巨大な力に立ち向かう闘いの中心軸のひとつは若い世代
です。

 〈 香港も同じ 〉

 香港も同じです。学生たちが道路を占拠し、大陸中国の一党支配の押
しつけに抵抗しました。香港の人たちは、過去約1世紀の間、イギリス
の統治下で民主主義や人間の自由、法治などの価値観を身につけました。
それは彼らにとって、空気のように必須かつ当然の、生きる基盤になっ
ていたはずです。

 香港の人々の価値観を尊重するために、英国は中国に香港を返還した
1984年、一国二制度の合意をかわしました。50年間、香港は自由
と民主主義体制を続けてもよいと、中国も合意したのです。

 しかし、中国共産党はイギリスとの合意は香港返還時点で失効したと
主張し、一党支配を押しつけようとしました。雨傘の学生たちはそのこ
とに抵抗して立ち上がったのです。

 雨傘の学生たちは、いま、中国から大変強い弾圧を受けています。学
生だけではなく、中国批判の書籍を発刊した出版社も潰されました。

 〈 誰も幸せにしない中国共産党 〉

 中国は結局、自国民も香港人も台湾人も、誰一人、幸せにできない国
なのです。習近平主席はあらゆる分野で弾圧を強め、自身に権力を集中
させています。毛沢東の再来かと言われる程権力を握っても、自国民さ
え幸せにできない独裁者が周辺国と「ウィンウィンの関係」を築くこと
など不可能でしょう。

 今回の参議院選挙の争点は、実はこの中国との付き合い方をどうする
か、中国にきちんと対峙できる日本になるにはどうするのかという点に
あると、私は考えています。中国の隣という地理的条件、中国と肩を並
べる経済大国であるという事実が、日本を中国の最大のターゲットに押
し上げています。


〈 アメリカ第一主義 〉

 他方、アメリカでは、「アメリカ第一主義」を唱えるトランプ氏が強
い支持を受けています。超大国ではあるが、アメリカはもう北大西洋条
約帰国(NATO)にも、日本にも韓国にも余り関わりたくない、アメ
リカ国民のために福祉や教育、医療にもっと力を注ぎたい、軍事的に他
国を助けることなど、もう真っ平だとトランプ氏らは考えています。

 トランプ氏が大統領になってもならなくても、彼の主張する「アメリ
カ第一主義」を熱烈に支持する数千万のアメリカ人がいます。この世論
は無視出来ません。アメリカはこれからかなり長い時間、内向き志向を
強めていくでしょう。中国の横暴に対してアメリカは言葉で異を唱えて
も行動で中国を阻止することは余りなくなるでしょう。イギリスのEU
離脱は他の欧州諸国にも広がることでしょう。フランスも、ドイツもオ
ーストリアも、ポーランドもどの国も「わが国第一主義」になっていく
中で、どの国も自立が問われているのです。


 〈 日本はどうするの 〉

 アメリカと中国とロシアを除けば、自国の力だけで自国を守ることが
できる国はありません。日本には自主防衛など、できません。だからこ
そ、日本は日米関係を緊密に保たなければなりません。それだけでなく、
オーストラリア、インド、東南アジアなどの国々と協力して、皆で一緒
に守り合う体制を作ることです。そのために日本は自力を強くしなけれ
ばなりません。他国に頼るばかりの日本など、どの国も相手にしてくれ
ないからです。

 安全保障こそ目の前の緊急課題なのです。中国の軍艦が鹿児島沖や沖
縄沖の海に侵入してくるようになりました。大変なことです。戦後70
年余、最大の危機です。


 〈 形容詞はいらない 〉

 危機を乗り切る際に、大事なことは形容詞を頭の中から排除すること
です。形容詞をかぶせた瞬間、事実に沿って物事を考えることができに
くくなります。

 たとえば、野党は安保法制を戦争法案と呼びます。そう言った途端に、
安保法制のルールや、それがどんなに厳しく自衛隊の動きを規制したも
のかなど、安保法制の実態が見えなくなって、まるでいまにも日本が戦
争に向かって走っていくようなイメージに陥ります。しかし、安保法制
を具体的に見ていけば、それが戦争につながることなど、絶対に不可能
です。むしろ、安保法制なしには日本の安全は守れません。戦争法案だ
と主張する民進党、日本共産党などは本当に無責任の限りです。


〈 問題はやはり憲法 〉

 再度強調したいのは、世界はいまアメリカの内向き姿勢と中国やロシ
アの対外膨張政策に直面しているという事実です。イギリスがEUから
離れ、EUが大きく揺さぶられ、やがて分散するプロセスが眼前で始ま
ったのです。世界の在り方が大きく変わり、先が見通しにくくなる中で、
何よりも自分がしっかりしなければなりません。南シナ海でしているの
と同じことを、中国は必ず東シナ海でもするでしょう。日中中間線のす
ぐ側で彼らは次々に海洋ステーションを構築しています。この事態に備
えるには、先述の安保法制だけでは足りません。憲法改正を1日も早く
実現しなくてはならない局面です。その意味で憲法改正こそ参院選で問
うべき争点だと、私は思います。


 〈 そして経済 〉

 もうひとつは経済力をどう高めるかです。EUの混乱はアベノミクス
にも負の影響を与えます。そうした中で、私たちはいまの社会保障をフ
ルスケールで続けることができるのか、答えは明らかに「ノー」です。
皆でどんな社会保障政策なら受け入れ可能なのか、各自がどれだけ負担
するのかなど、真剣に考えなければなりません。

 もう一点、日本は実は労働生産性がとても低い国です。どうしたら生
産性を高めていけるのか。自分のこととして考え、声をあげていきたい
ものです。


 〈 国際社会のスタンダード 〉

 国の基盤が経済力と軍事力であるのは国際社会の常識です。若い世代
の人たちに、国の在り方を知ってもらいたい。台湾や香港の学生のよう
に世界情勢をみてもらいたい。とりわけ中国の実情をよく知って、どの
ように日本を守り、盛り立てていくか、若い世代のためにも未来を大き
く切り開いていくことのできる国をどのように創るのか、考えてほしい。
米中欧の劇的変化の中で日本をより力強く、より自立した国へと変えて
いくために、一人一人の選択を一票に託してほしいと願っています。


※記事、画像等の許可なき転載複写並びに二次的利用はお断りいたします。

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