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Vol.179 一般公開

認知症徘徊事故の責任は誰にあるのか

他人事ではない超高齢社会のリスクを考える

2016.03.25 60分

 認知症男性(91)が徘徊中に電車にはねられ死亡した事故で、家族が鉄道会社への賠償責任を負うかどうか争われた訴訟で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は3月1日、男性の妻に賠償を命じた2審名古屋高裁判決を破棄、JR東海側の逆転敗訴を言い渡しました。
 今回の対談は、薬害エイズ裁判を櫻井キャスターと共に闘った“戦友”清水勉弁護士がゲストです。清水弁護士は、認知症などで責任能力のない人が、他人に損害を与えても賠償責任がないという民法713条を説明し、その例外規定で責任能力がない人を「監督する法定の義務の負う者」は、賠償責任があるという民法714条を説明しました。
 最高裁判決では、同居の妻(当時85歳で要介護1)も長男(別居)も「監督する法定の義務の負う者」に当たらないとして賠償責任は無いとする一方で、JR東海の対策にも批判がありませんでした。つまり責任は誰にもないが、JR東海が損害賠償をかぶったことになります。
 櫻井キャスターは、「責任の空白」があることは良い社会なのかと最高裁判決に疑問を突きつけます。例えば、今回と同じ境遇の認知症男性が車を運転し民家に突っ込み、JR東海ではなく「個人A」に損害を与えたという事故を想定すると、この最高裁判決と同じ論理で裁けば「個人A」の補償は宙に浮きます。
 さらに櫻井キャスターは、最高裁判決では 「お世話すればするほど責任が取らされる一方で、ご長男が別居していたので監督責任が無いという判断は、とんでもない考え方を後押しする」と指摘します。清水弁護士は「横浜に住んでいる長男が認知症の父親をコントロールできる可能性を疑問視しているわけですが、遠方に住んでいる方が損か得かというのは、施設に入れることを選択するかどうかになる」と述べました。
 対談の最後には、高齢化社会で責任能力のない人が起こした損害を補償する方法としての「保険」の活用、北欧などの模倣でなく日本型の高齢化社会のモデル作り、誰もが経験のしたことのない高齢化社会を誰も逃れることができない問題として考えるなど様々なテーマが話し合われました。

≪動画インデックス≫
 1.1審、2審の基準となった妻、長男は「法定の監督義務」を負う
 2.最高裁判決の基準となった妻、長男は「法定の監督義務」を負わない
 3.なぜ認知症男性を一番お世話した長男の妻を1審~最高裁まで司法が守ったか?
 4.同居すれば監督責任があり、別居ならば監督責任はないのか?
 5.最高裁はJR東海の対策を批判していないが、結局JR東海が損害賠償をした理由
 6.誰にも責任はないという最高裁判決は良い判決なのか?
 7.同じ条件、境遇でJR東海が貧しい個人だった場合には損害賠償は宙に浮く
 8.高齢化社会に向けた事故回避のための「保険制度」
 9.これまでは話し合いで解決できたのに、なぜ初めての訴訟になったのか?
10.日本が世界最先端高齢社会である以上、問題解決のモデルを示す必要がある
11.北欧の“見切り”型福祉ではなく、日本型の福祉社会を目指せ
12.高齢化社会は誰も“逃れることができない問題”として考えるべきだ

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清水勉
弁護士

1953年生まれ。東京弁護士会所属。さくら通り法律事務所所属。日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員、自治体法務研究会会員、政府の情報保全諮問会議メンバー。薬害エイズ訴訟において鈴木利廣弁護士らとともに活動し勝訴に導いた。共著に、「デジタル社会のプライバシー」(航思社)(2010年10月)、「『マイナンバー法』を問う」(岩波ブックレット)(2012年8月)、「逐条解説特定秘密保護法」(日本評論社 2015年6月)。民主主義社会の情報の流通のあり方(情報公開とプライバシー保護)を継続的な課題としている。

※ プロフィールは放送日2016.03.25時点の情報です

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