夏特集②は「素晴らしき日本人」を歴史から探ります。歴史家の磯田道史さんは最新作『無私の日本人』で、江戸時代に生きた素晴らしき日本人を描きました。主人公の心を揺り動かす力は、私心を捨て、他人のために何かをなしたい無私の心で、この心こそがこの国を支える真髄なのでしょう。
櫻井キャスターが「なぜ歴史から掘り起こして素晴らしい日本人を書こうとしたきっかけは何か」と尋ねますと、磯田さんは「東日本大震災が起きて絆が強調されていたが、それは本当は絆が無いのではないか。そんな時に江戸時代の古文書を読んでいると私利私欲を超えて共感性が高い日本人の姿を行間から感じた」と『無私の日本人』を書いた動機を明かしました。
対談の中心は、造り酒屋の穀田屋十三郎の奇想天外な発想力と絶世の美女大田垣蓮月の数奇な運命と私財を投げ打ち貧者を助ける「自他平等」の心です。磯田さんは「人間は、偉くなったりお金を集めたりしただけでは、少々愉快にはなるけれども、人に感謝された時が、やっぱり一番嬉しそうにしている。身の回りの偉くなった人たちを見ても、古文書の中に見た人も殆どがそうだった」と語りました。櫻井キャスターも「ひたすら与えるという価値観が、昔の素晴らしい日本人を作った」と応じました。夏の夜の対談は、歴史に光を放つ、強く美しい日本人を語り合いました。
≪動画インデックス≫
1.岡山生まれの磯田道史は、子供時代に弥生時代の土器で遊んだ
2.なぜ江戸時代を中心とした歴史小説を描こうと思ったか
3.高校時代にくずし字解説辞典で古文書を読めるようになった
4.仙台藩穀田屋(造り酒屋)十三郎の革命的な発想力とは?
5.貧しい吉岡宿の庶民が仙台藩に1,000両を貸して利息をもらって暮らした
6.幕末の識字率は4割を超える世界でもトップクラスの高さだった
7.絶世の美女大田垣蓮月の数奇な運命と人々に施す「自他平等」の心
8.人に感謝されることが一番の幸せ
9.現在の日本人は「共感性の価値観」を失っている
10.昭和天皇の「一視同仁」とは何だ?
11.蓮月の歌が西郷隆盛の江戸城総攻撃を思い止まらせた
12.映像ではなく活字こそが思想を表現するメディアだ
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磯田道史
歴史家
1970年岡山市生まれ。慶應義塾大学大学院卒。博士(史学)。茨城大学助教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、現在、国際日本文化研究センター准教授。著書に『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞、2010年映画化)、『近世大名家臣団の社会構造』(文春学藝ライブラリー)、『殿様の通信簿』(新潮文庫)、『江戸の備忘録』(文春文庫)、『龍馬史』(文春文庫)、『日本人の叡智』(新潮新書)、『歴史の愉しみ方』(中公新書)、『歴史の読み解き方』(朝日新書)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書)など多数。『無私の日本人』(文春文庫)の一編「穀田屋十三郎」が2016年「殿、利息でござる!」として映画化された。
※ プロフィールは放送日2016.08.05時点の情報です