- 2018.10.28
- 一般公開
柿の実をいかにハクビシンから守るか 臭いで撃退も小鳥が去って思案の日々
週刊ダイヤモンド 2018年11月3日号新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1253庭のまん中あたりまで張り出している柿の木の枝にとまって、その小動物は、じっと私の方を見た。丸い大きなヌレヌレとした黒い瞳。鼻スジが白くスーッと通っている。かわいらしい顔だ。図鑑で確かめたらハクビシンだとわかった。これが彼と私の初めての出会い、柿の実が食べ頃に熟す丁度去年の秋のことだった。その秋、何年か前に兄と植えた柿の木が初めて実をつけた。兄は亡くなり、私は柿の木を見ると朗らかだった兄のことを想い出す。柿は春に沢山の花をつける。枝々にくちゅくちゅとした若葉のかたまりのような芽が出るが、それを私は柿の花だと心得ている。それはすぐに実になるのだ。しかし、雨に打たれ風に吹かれて、小さな実はポロポロと落ちてしまう。昨年、枝に残って赤ちゃんの拳ほどの小さな、しっかりした実にまで成長したのは、数えてみると23個もあった。私は毎日、書斎の窓から柿の実の成長を眺めて暮らした。もう少し大きく、そして甘くなったら、ひとつふたつもいで、兄に供え、ひとつふたつは母と私がたのしんで、あとは庭にやってくる小鳥たちについばんでもらおうと心づもりしていた。...