- 2018.08.09
- 一般公開
複雑な欧州情勢に見る日本への教訓
『週刊新潮』 2018年8月9日号日本ルネッサンス 第814回トランプ米大統領は、ブリュッセルで行われたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議に先立つNATO議長との会談で、メルケル独首相を「ロシアの捕虜だ」と貶めた。NATO諸国が軍事費を増やして備えを進めているロシアに対して、ドイツは「ノルドストリーム2」と呼ばれる海底ガスパイプラインの敷設で協力し、ロシアの天然ガスをはじめとするエネルギーの欧州向け販売で力を貸し、毎年何十億ドルもの資金をロシアに与えることになるとして、氏は怒ったのである。エネルギーは如何なる国にとっても最重要の戦略物資である。ロシアは、ウクライナ経由のガスパイプラインで欧州にガスを売ってきた。しかしウクライナで反ロシア政権が誕生したり、反ロシア国民運動が高まると、パイプラインの元栓を閉めて圧力を加えた。ウクライナはロシアのガスを欧州諸国に分配するガス通行料収入どころか、ガスの供給を断たれておよそ全ての経済活動が停止。完全にお手上げだった。だが、ロシアにとってもガス栓を閉めることは身を切る結果となった。エネルギーの輸出はロシアの輸出全体の約半分を占め、国家予算の40%がそれによって賄われているからだ。そこでプーチン氏は、ロシアから直接バルト海の海底にパイプラインを通し、ウクライナを経由せずに欧州へ天然ガスを移送することを考え、ドイツを中核国としようとした。それが「ノルドストリーム2」だ。...